オクちゃんの読書日誌 第9回

「ハートイン・エクスプレスメモリー

    東北新幹線が運んだ熱い想い)

              作:さかき原枝都は

 

13,074文字

http://novel.comico.jp/challenge/23156/

ノベルコミコ 2016-12-25

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882255413

カクヨム 2017-12-04

 

 

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東北新幹線やまびこ 1982年6月登場 盛岡まで

 

 

雪の聖夜に秋田で生まれた若い二人の想い

   それを運んだ 東京ー盛岡 東北新幹線

 

「ハートイン・エクスプレスメモリー

 

 携帯電話もスマホも無かった。

秋田ー東京 遠く離れて、声を聞けるのは固定電話と公衆電話。

あとは、紙に書いたラブレター。

それでも、私たちの心は一つになっていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

 

  私は東京、彼は遠く離れた東北ー秋田。

  離れたくなかった。いいえ、離れる事さえ考えつかなかった。

 でも、現実は違った。

 

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 東京に行って最初のクリスマスの手紙。

 

 前略

村田人志(ひとし)

今年のクリスマス・・・一緒に過ごすことは出来ません。

でも、20日はお休みです。

だから、19日の最終の新幹線で盛岡までなら行けます。

人志、来てくれるかな?

秋田まで行きたいけど、私には時間がありません。

いられても、次の日の最終の新幹線の時間まで。

出来たら、本当に、出来たらでいいです。

もし、時間が取れるなら・・・逢いたい。

ほんのいっときの間でも。

早々

並木絵里奈(えりな)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 私は女子なのに工業高校に進んだ。

私以外は全員男子。 私は「紅一点」。

人志とはクラスが同じだった。

 

 家は貧しく、バイトで学費は勿論、生活費の一部まで

稼がねばならなかった。 学校が終わると、喫茶店で夜まで

働き、家に帰れば内職の手伝いで、寝る時間も無かった。

 

 そんな私を学校では、身体も売っているのではとさげすまれていた。

自分でもお金が欲しくて、そうしても良いと思っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 雪降るクリスマスの夜、喫茶店の仕事が遅くなり、足早に家に

向かっていた。 後ろから男性に声をかけられた。 手を掴まれ、

「今夜はクリスマス。お互い一人だから、楽しくやらないか。 

おこずかいもあげるよ。」と云われ、足が止まる。

 

 駅前通りのホテルの近くに差し掛かったところで、人志に

止められた。 男から引き離され、頬を平手で引っぱたかれた。

「自分をもっと大切にしろ」と云われ、雪道で泣き崩れた。

人志に抱きあげられ、人志の暖かい胸にあたためられた。

そして、人志との付き合いが始まり、2年が過ぎた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 人志は地元企業に就職。 私は東京の働き口へ行く。

卒業式のあと、人志に引っ張られて、雪の残る小さな公園に行く。

手紙を渡し合い、今度はバイトしていた喫茶店に連れて行かれた。

人志や友だちが卒業記念パーティーを用意してくれていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 東京に出発する日、両親と妹、弟が駅まで見送ってくれたが、

肝心の人志の姿は無かった。東北新幹線はまだ盛岡ー上野間。 

2時間かけて、普通列車で盛岡に着く。 

 

 後ろから、暖かい手が頬に触れる。 振り向くと、人志の顔が。

 

 「やまびこ166号上野行きは間もなく発車します。」

 

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クリスマスが来ると熱い想いがこみあげる

 初めてのクリスマスの前に人志に送った手紙の通り、12月20日、

私は最終の東北新幹線で上野から盛岡に向かった。

人志から返事は無かったけど、私は信じていた。

盛岡は秋田のような雪は無かったが、空気は冷たかった。

寒いホームのベンチに座って人志を待ったが現れない。

諦めてホームから下に移動しようと立ち上がった。

後ろから暖かい手で眼を覆われた。

「だーれだ?」

「ただいま、人志」

「おかえり、絵理奈」

「手紙出したのに返事くれないから、来てくれないかと思った」

「ごめんごめん、読んですぐどこかにいっちまった・・・」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 私たち二人は2本のレール。 どんなに離れていても、

レールのように、いつも心と心は繋がっている。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 今年は3回目のクリスマス。 今度は私が人志を待つ番。

人志が私のいる東京にやってくる。

彼の乗る東北新幹線がホームに滑り込んでくる。

ドアの向こうに私の大切な人。

 

 クリスマスは私たちの記念日。

 

           メリークリスマス! 

 

                                                                                         

  

オクちゃんの読書日誌 第8回

「躊躇いと戸惑いの中で」 

(ためらいととまどいのなかで)

https://www.berrys-cafe.jp/pc/book/n1129300/

ベリーズカフェ 2015-07-01 136,545文字

 

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書 籍 コーナー

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CD  コーナー

 

 私は男っ気無し。 独身。 年齢 31才。 職業 OL。 

駅前とか郊外にCDや書籍の販売店をチェーン展開する会社の

本社で総務統括というポジションなので残業が多い。

名前は碓氷(うすい)沙穂(さほ)

 

 今は、テレビのゴールデンタイムが過ぎた時分。

オフィスの天井照明は私のデスクのまわりだけを照らしている。

パソコンを使って新店オープンの準備資料をチェック中。

 

 そこへ同僚でエリア・マネージャーの河野眞人が缶コーヒーを

持って現われる。 彼はすでに10店舗以上の新店のオープンを手がけ、

ベテランの余裕を身にまとっている。 そのあと食事をしながら仕事の話。

 

 ゴールデンウィーク前に本社近くの駅前型店舗に、店長に頼まれた

備品を届けに行った。 そこのCD販売部のレジで新人研修中の

乾(いぬい)君に「慣れた?」と声を掛けると、

凄くびっくりした顔を見せられ、こちらも驚いた。

 

  1才年長の木下店長を探してバックヤードに行くと、

また部下に休まれたのか徹夜明けの様子。 

そこへ河野が現れ、新人の乾君の描いた手書きのPOPの出来が

素晴らしいと褒めた。 

然し、会社の規則で手書きのPOPは禁止なので、私がウィンドウに

貼ってあったのを剥がした。

乾君が河野と私を見て「仲が良いんですね」と云ったが、

言い方が気になった。

 

 河野の話では、POP部の梶原がIT関連の企業にヘッドハント

されそうだから、乾君を後釜に推薦したいとのこと。 POP部へ

梶原の様子を見に行くと、転職は事実のようだった。

 

 そのあと、自販機の微糖か、給湯室でちゃんとコーヒーを

淹れるか悩んでいるところへ河野がやってきて飲みに誘われた。

本社から離れた場所にある居酒屋へ行くことになった。

河野が木下店長の店に用事があって寄ると、乾君が帰るところ。

私が河野と一緒なのを見ていぶかしむ。

 

 河野はPOPに移動させる話でもするのか、乾君に一緒に飲みに

行こうと誘う。 乾君が遠慮をするのを強引に連れて行く。

乾君が、「お二人は仲が良いんですね」と云い、

付き合いされているんですか」と続けると、

河野が大笑いして否定。 

私も河野をそういう風に見たことは一度も無かったが、

河野のリアクションには腹が立った。

乾君は「そうですか、お付き合いして

いないんですね」と念を押したような言い方をする。

 

 河野は私と乾君を肴に盛り上がる。

河野は乾君に「会社は彼女で回っているようなもんだ」と

私を持ち上げる。

河野が乾君に店長志望だと思うが、本社のPOP部門に来ないかと誘う。

私の調べでは、乾君は美大卒業でコンピューターにも詳しい。

POP行きは断るかと思ったら、考えてみる、と前向きな返事。

 

 翌日、二日酔いのところへ、社長が回ってきて、状況を聞かれる。

帰りに木下店長の店に乾君の様子を見に行くと、若いだけに爽やかな顔。

私は乾君に「彼氏はいないんですか」と訊かれ、

質問の意図がわからないが、みんな知っていることだし、

「いない」と返事。

 

 数日後、河野が乾君から意外な早さで、POP部への移動OKする

という返事が来て驚いている。 私が何かしたんじゃないかと疑う。

 

 梶原に新店オープンで忙しいだろうが、乾君の指導を頼むと云いに

POPに顔を出した。 その後、ランチに行こうとすると、乾君に

一緒して良いかと聞かれる。

食事をしながら、乾君にどうして本社のPOPに来ることをあっさり

受けたのかと聞くと、「碓氷さんがいるからです

との返事。 

乾君に「笑顔が素敵ですね」と云われて冷や汗をかく。

 

 店舗回りのあと、帰社後POP室を覗くと、全員新店に行っていて、

乾君一人で作業をしていた。 手伝おうとプリンターのインク補充を

していたら、手が汚れた。 そのままの手で書類に触りかけると、

乾君に手首を掴まれてびっくり。 インクの付いた手で書類に触り

そうになって、引き止められたのだった。 

乾君は私の手首を離さず、「手首が華奢ですね」と云う。 

乾君はまだ仕事というから、代わりに弁当を買ってきてあげると

云って外へ出た。

 

 乾君の弁当を買って帰り、渡して帰ろうとすると、

河野が帰社してバックヤードで作業していた。 

乾君に弁当を買ってきたことが気に入らない様子。 

乾君に弁当を渡したら直ぐ帰れとか、夜道に気を付けろとか

云いながらイラついている。

 

 河野には弁当がないから、せめて栄養ドリンクでもと、持って

行ったら、足元の道具箱に躓き、河野の上に覆いかぶさるように

倒れ込む。 河野が抱き留めてくれたが、ストッキングが破れ、

膝を擦りむいてしまう。

 

 電車で帰るのはみっともないからタクシーを呼ぼうかと

考えていたら、河野が車で来ているから、家まで送ると云う。

外で待っている所へ乾君が通りかかり、膝の怪我を見つける。

乾君は「タクシーを呼んで送ります」と云うが断る。

そこへ河野の車が来ると、乾君が河野とはそんな仲なのかと訊く。

 

 河野は乾が自分と私の従来の仲を割きたがっていると云う。

車から降り際、河野は私の手を掴まえ、私に結婚してやる

と言い出す。そして、私の身体を引き寄せ、キスをしてきた。

 

  翌朝、入社して初めて会社に向かう足が重い。 河野に会うのが

恐かった。 後ろから乾君に肩を叩かれ、前夜、河野と何処かへ

行ったのではないかと疑いの目で見られる。

 

 仕事は山積み、時間が惜しいので、サンドを買いにコンビニに向かう。

途中、梶原に弁当を頼まれたと云う乾君に追いつき一緒に行く。

帰社して廊下で河野に会い、一歩身を引くと、悲しそうな顔をする。

河野は昨夜のことは焦った結果で申し訳ない、今後も今まで

どうりで頼むと詫びる。 

 

 最後にキスしたのは2年前のこと。 相手は付き合っていた

彼とだが、お互いに仕事が忙しくて別れたのだった。

河野とはそんなつもりがまったく無かったからショックだった。

 

 乾君が備品を貰いに来たので倉庫に連れて行く。

受け取り確認フォームに書いた名前でフルネームが乾聡太と判る。

出た所で河野と鉢合わせ、河野と乾君がにらみ合う。 乾君が去った後で

河野に大人げないと文句を言うと、乾も分かっている筈という。

 

 終電間際まで残業し、帰りがけにPOPフロアを覗くと、乾君が

一人で残業中。 声を掛けて帰ろうとすると、一緒に帰るという。

入社した時の気持や、POPに移動を決めた時の心境を聞く。

遅いからとマンションの前まで送ってくれる。

 

 河野と何かあったのかと聞くと、想うことが同じ

だということにお互いが気付いただけだという返事。

 

 郊外型の大型新店舗のオープンに行き、みんなで喜び合う。

 

 河野は「結婚してやろうか」と云ったのは本気だと云う。

河野の車で会社に戻る。 梶原が辞めた後、新人の乾君でPOPが

うまくいくだろうか心配だと云うと、河野は自分がPOPを監督する

から、私は店舗とか、他を見ればよいと云う。

POP室を覗くと、乾君がプリンターの故障を修理していた。

手がインクで汚れていたので、給湯室に連れて行く。

 

 乾君は私が河野と親しいことが気に入らない。私は河野とは仕事の

関係だけだと説明。 然し、乾君は河野はそうでは無いと反論。

乾君は「河野さんには渡したくない」と云って、

私をシンクに押し付け、抱き付いてキスしてくる。 

河野のときとは違い、私もその気になった。

 

 河野から飲みに誘われ、いつもの居酒屋の個室で落ち合う。

河野から「結婚の話は本気」だと云われるが、私は乗り気になれない。

乾君について聞かれる。 乾君が私に気があることは気付いているが、

7才も年下だから、若さゆえの気の迷いだろうと返す。 

河野は「一緒に指輪を買いに行っても良いのだぞ」と云ったが、

私は今のままが良いと返事。

 

 早めに仕事が終わり、乾君が一緒に帰りたいと云う。

居酒屋のカウンターに空席を見つける。 上司で年上の私を

相手にするより、若い子と付き合った方が良いよと云うと、

年は関係ないと云う。 結婚を前提で付き合ってくれと云う。

 

 マンションの前までと云っていたが、エントランスの中まで

ついて来た。 私を壁に押し付け、キスをしたうえで、

僕の気持は変わりません碓氷さんが

好きです。ほかの誰にも触れさせたくない。

僕と付き合って下さい

と云われたら断れなくなった。

 

 翌朝、乾君に公然と夜の食事に誘われる。 経理のベテラン

女子社員の田山さんがニヤニヤしていた。

 

 河野から結婚の申し込みに乗らないことを愚痴られる。 

夜のデートの相手は乾君かと聞かれたから小さく頷く。

 

 食事ではワインのボトルを殆ど私一人で空けてしまった。

勘定の支払いで少し揉めたが、結局乾君が全部持った。

乾君がタクシーで送ると云い、マンションに着いたが、

乾君も降りてしまい、料金も払ってくれる。

コーヒーに誘い、部屋に上げる。 三度目のキス。

押し倒されて一線を越える。 

乾君が「碓氷さんの中、あったかい」と云う。

 

 翌朝、河野に会うと「眉間の皺がすげーぞ」と云われ、

経理の田山さんには「うれしいことあった?」と訊かれる。

昼から新店を河野の車で見に行くことに。

給湯室でコーヒーを淹れていると、乾君が現れ、河野と

一緒だと聞くと暗い顔をする。 こんな所でと逆らうのに

無理やりキスされる。

 

 新店には午後からと聞いていたが、社長が来るとのことで、

昼前に出ることになった。 乾君とランチの約束があったが、

連絡出来ずに車でスタートすると、乾君が玄関で見ていた。

社長はPOPが良くなったと、河野を褒める。

河野とファミレスで遅い昼食。

乾と付き合っているのかと聞かれ、頷く。

河野は「結婚は諦めたのか?アイツとの結婚を考えているのか?」

と聞かれ、「それは無理だと思っていると」返事。

河野は「年下の男に言い寄られて舞い上がっているだけだ。

俺は待っているよ。」と云う。

 

 乾君から夜の食事に誘われる。 彼は私の降りる駅のそばに

オープンしたばかりのレストランを見つけていて、そこへ連れて

行ってくれる。 私が店員と普通に笑顔でやりとりしていると、

乾君はヤキモチを焼く。「あの店員と仲良くしないで。沙穂は

魅力的だからあの店員に言い寄られると困る。」と云う。

また、「河野さんとはどうなっているの?余り、一緒に居て

欲しくない。」とも言う。

 

 お互いのことをもっと知り合おうということで、

名前の沙穂・聡太と呼び合うことにした。

 

 乾君からベテランのバイトとの関係で愚痴を聞く。

乾君は私が河野といると何かと邪魔をする。

 

河野から社長の話について飲みながら話したいと云って来る。

聡太から「すぐ来て」と云われて行くと、「河野と夜会うのを

やめてくれ」と云われる。 駐車場まで連れ出され、

人に見られると困ると云うのに抱き付かれる。

 

 河野の話はもう一人のエリアマネージャーの小田が担当する

内藤店長の郊外店の業績に不安があり、社長から担当を河野に

変えるとの命令が出たので、私に手伝ってくれと云う。

 

 河野は乾君が仕事中でも私を呼び出すとか、若さからくる

公私混同が度を越す危険があるから心配だと云う。

 ダイヤの指輪を差しだし、持っていてくれと云う。

 

 聡太から「河野さんの愚痴を聴きに行ってから、沙穂

おかしいね。」と云われる。 そこで、「会社で私情を

持ち込むのはやめにしない?」とやんわり、言葉を選んで

言い聞かせる。 すると、聡太は「河野さんにプロポーズでも

された?」と云い、「今夜は帰る。」とその場から立ち去る。

 

 それからは、聡太は私を避けるようになった。

 

 或る日の帰りがけ、聡太から「お願いがあるんだ」と云われる。

 

 「少し、距離を置かない 

沙穂を好きな気持ちは変わらない。

けど、河野さんとの事を理解する余裕が今の僕には無いし。

理解もしたくないっていうのが正直な気持ち。 

沙穂のそばにいると、どうしても河野さんの影がチラついて、

どうしようもなく苦しくなるんだ。

だから、ごめん・・・、しばらく離れたい。」

と告白される。

 

 それから、聡太は私を避けるようになり、一か月ほど過ぎた。

給湯室でコーヒーを淹れていると、河野が来て仕事の話。

そのあと「やっぱり焦りすぎたのかもしれないな」と漏らす。

 

 ある週末、おしゃれをして外出。 コーヒーを飲んでいると

河野が現れる。「乾と待ち合わせか?」と云い、友達と会うからと

立ち去る。

 

 河野から「渡した指輪を返してくれ」と云われる。

先日会った友達に相談したら、そんなことは良くないと云われた

そうだ。 決めるのは碓氷なのに、いろいろ引っ掻き回して

悪かったと謝られる。

 

 帰りに聡太の姿を探して急ぐ。 私の駅で降りたところで

追いつく。 聡太は「沙穂が追い付いてくれて嬉しい」と云う。

そして「シンプルに考えることにしたんだ

年下とか河野さんのことは忘れて、

自分の気持に正直になろう。 

沙穂が安心していられるような男になる。 

沙穂を幸せにしたいから。」

と云われて、私は「ありがとう」と云い、

回りも気にしないで聡太と抱き合うのだった。

 

                

 

オクちゃんの読書日誌 第7回

「君に出会ったあの日を忘れない」

  小さなお守りが結ぶ物語  作:さかき原枝都は

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n1163dk/

小説家になろう」 69,487文字   2017-08-24

 

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の二つの小さなお守り」がこの物語りを動かす。

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 このお守りは特注品で、二つのお守りを合わせると、

鳳凰の絵が完成する。

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           予 告 編    

 

 俺の名は藤田磨緒6年ぶりに母親の故郷の秋田に遊びに来た。 

 叔父の経営するペンションに泊めて貰っている。

近くのスキー場に行ったのだが、初心者であることを忘れ、

ついうっかり、上級者のコースに入ってしまった。

調子に乗って滑っていたら、スピードが出過ぎてしまった。

運よく、仕事を終えた女性インストラクターが発見、

左肩に体当たり、雪面に叩きつけられ、無事に止まったが、

右足を骨折してしまった。

 

 その女性は幼いころから知っていた従姉の墨田瞳だった。

おかっぱ頭で、男勝りの少女が、すっかり大人で美しい女性に

変身していて、俺の心を奪ってしまった。

 

 二人は久し振りの再会を喜んだが、6年の間にはお互い辛い

思いをしていた。 瞳は東京の大学時代の講師との不倫を

清算して、身も心も疲れて秋田に戻っていた。 磨緒は貧しい

母子家庭の辛さと学校での虐めという苦痛を味わった。

 

 6年前に別れるとき、磨緒は瞳から小さなお守り袋を貰った。

そのお守りは瞳が高3のとき、夏合宿セミナーに来てくれた

講師から貰った赤と紺の対の、紺の方。

 

 このお守りは「縁」を結ぶ力を持っているとされていた。

瞳が何故磨緒にこのお守りを渡したのか。

二人の手に渡った、このお守りによって引き寄せられた

二人の仲はどうなるのだろうか。

 

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         瞳の過去

 

 私は妻子ある男性を好きになったが別れた。

彼は私が通う音大の講師だった。

私は中学時代の吹奏楽部でピアノに出会った。

彼からピアノを教わるうちに、彼のことも好きになった。

ある日、彼の家の前で彼が家族とともにいるのを見た。

彼が九州の大学に移籍するとき、一緒に来てくれと云われたが、

私は断った。ショパンノクターン2番が聴こえてくると、

彼との暗い過去の記憶が蘇る。

 

      ・・・・・・・・・・・・・・

 

             現   在

 

 磨緒は瞳のアパートに泊まりに来る。

磨緒は瞳の昔の彼が呼んでいた「アイ」という呼び名が

気に入って、瞳をアイと呼ぶ。

瞳は磨緒の高校の音楽教師。 

7才年上のいとこだが、磨緒はそんなことは一切

気にせず、二人の仲は永遠に続くと信じている。

 

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

         本    編

 

 6年という時間をおいて、運命は二人を引き寄せる。

 

 磨緒が高2の年の12月中旬、秋田に居る母の兄で、

ペンションを経営する伯父から、磨緒の家である藤田家に

1本の電話が入り、物語りが大きく動き出す。

 

 伯父の電話は磨緒が翌年は大学受験の準備で、

秋田には来られないだろうから、この冬休みに家族で

遊びに来ないかという誘いだった。 然し、両親は年末も

忙しい仕事で、4才年上の姉は大学のサークルの旅行の

予定が入っていた。

 

 磨緒は一人でも行くつもりだったが、悪友の須郷多唯人

(すごうだ ゆいと)に話したら、俺もつれて行けという。 

それを聞いていた、同じクラスの宮下優子まで私もという。

女の子一人ではといったら、隣のクラスの町田実来

(まちだ みく)を誘ってきた。

 

 かくして、四人は新幹線「こまち」で秋田に向かう。

駅に伯父が車で迎えに来てくれた。ペンションに着いたら、

伯父が早速スキーに行ってこいとチケットをくれた。

 

 みんな初心者だが、磨緒は前に一度滑ったことがあり、

上級者コースとは知らずに、傾斜の急なコースに出てしまった。

加速が付いたが、止め方を知らず、もう駄目だと思った。

そのとき、突然左肩に体当たりを食らって、右に倒され、

そのまま滑って、雪の深いところに突っ込んで止まった。

その結果、右足を骨折、痛みで失神、病院に搬送された。

 

 助けたのは、7才年上でいとこの墨田瞳(すみだひとみ)

二人は6年振りの再会だった。

 

 磨緒の両親が離婚、母が東京で働くために、磨緒は秋田の

兄に預けられた。 弱虫の磨緒は虐められ、苦労したが、

瞳が慰めてくれた。磨緒は小学生低学年、瞳は中学生だった。

最後に会ったのは彼女が高3の夏。

 

 入院した病院に唯人、優子、実来の3人が見舞いに来てくれた。

右足骨折は1週間の入院を含め全治2ヶ月の治療が必要。

夜、瞳が見舞いに来た。 磨緒の名札が藤崎姓になっていることに

気付く。 磨緒は母親が再婚し、義理の父親と、4才年上で大学

2年の麻美という義理の姉が出来たと説明。

 

 瞳は東京の音大に通っていた時は三軒茶屋に住んでいた。

磨緒は母の再婚後は高円寺に住んでいた。 二人が同時期に

同じ東京に住んでいたことを知り、磨緒は残念に思う。

 

 瞳は翌年4月から東京で就職するから、3月には東京に

行くと教える。 瞳が結婚もしておらず、彼氏も居ないと知って

磨緒は「だったら、俺と付き合はないか」と云うと

瞳は「こんなおばさんで良いの」と笑い転げる。

瞳は磨緒に携帯電話の番号とメルアドのメモを渡す。

 

 次の日、3人の友人たちが帰京の挨拶に寄る。

 

 入院5日目に松葉杖で歩く。 瞳が休日を利用して来院し、

退院の手続をしてくれる。 看護師が瞳を磨緒と同い年かと云う。

 

 瞳の車で退院し、途中スーパーに寄る。

そこへ瞳の中坊の弟、が現れる。

 

 弁当を食べるために、ペンションのそばで、眼下に雪原と

青い色の湖が見える高台に寄る。

 瞳がオーデイオのスイッチを入れると、ショパン夜想曲

2番 変ホ長調 作品9-2が流れて来る。

 

 ペンションに帰ると、伯父さんに磨緒が「瞳」を呼び捨てに

していることを冷やかされ、二人とも赤くなる。

 磨緒が瞳に世話になった礼を云うと、瞳は自分こそ磨緒に

感謝していると云うのだが磨緒には訳が分からない。

すると、伯父も磨緒には感謝しているのだと云う。

2年前の春、瞳が東京から秋田に帰ってきたとき、

瞳は抜け殻のようだった。 

そして、ピアノを見つめて泣いていた。

伯父さんが瞳にペンションを手伝わせると、元気になり

東京で妻子ある音大の講師向田敦と不倫、辛い別れを

したことを告白。 そのきっかけが、瞳が磨緒に渡した

お守りの片方を見つけ、伯父さんと磨緒の話をしている

うちに、磨緒を東京から呼ぶことになり、それでようやく

瞳が東京での事を伯父さんに話せるところまで元気になった

ことへの感謝だとのこと。

 

 伯父さんが奥さんの大阪の実家に用事があり、三日間留守を

するが、瞳にその間ペンションの世話を頼むと云う。

 

 瞳が疲れているのを見て、磨緒は瞳の肩を揉む。

そのうちに磨緒の手が瞳の身体を抱き込み、

二人は抱き合う。

 

 瞳は大学に入った時、磨緒の姿を見に行ったが、貧しそうで、

同級生に馬鹿にされているのを見て、その場を立ち去り、二度と

会いに行かなかった。

 

 磨緒と瞳はバスタブに一緒に浸かる仲になった。

 

 瞳は磨緒の通う都立・中の原高校の音楽教師になると教える。

瞳は父の勤める秋田の市役所の観光課に勤めたが、東京に

忘れ物をしてきた思いがあり、東京の高校教師の職を探した。

瞳には父親の反対が心配。

 

 瞳は東京に忘れて来たものは磨緒だったと気が付いた。

 

 瞳が中学時代、磨緒が母と別れて独り秋田に来ていた。

半年位だが、瞳と磨緒はいつも一緒だった。

 

 瞳が高3のとき、音大向けの一週間の夏季講習に参加した。

成績が一番良かったと講師に褒められ、特別なお守りを貰った。

それは赤色と紺色の二つの小さなお守りで、その表に刻まれた

文様は、二つが揃うと一つの絵柄になるように描かれていた。

 

 瞳は高校時代、同級生でバスケット部の部長の男子と付き

合っていたが、彼が仙台、瞳が東京と大学が分れるために別れた

という過去がある。

 

 瞳が音大受験のための夏季講習を終えて家に帰るとき、

電車が遅れ、家に電話したら、丁度、磨緒が秋田から東京に

帰るところだった。 瞳は大曲駅で磨緒を掴まえ、

紺色のお守りを手渡した。

 

 このお守りをくれた講習会の講師から、縁(えにし)が

結ばれたら、そのお守りは次の人に渡すものだと聞かされていた。

 

 伯父さんが帰って来る三日目、ペンションは休みで、

磨緒は瞳の車で病院に連れて行って貰う。そこで、瞳の

高校時代の同級生で女性看護師の一美(かずみ)に会う。

彼女は瞳は昭人(あきと)と一緒になると思っていたと云い、

瞳に昭人は大曲の結婚式場で働いていて、会ったら喜ぶよと云う。

磨緒は医師から、あとは東京の病院で処置をして貰えばよいと

云われる。

 

 ペンションに帰ると、瞳の父親、義(ただし)が車で

待っていた。 身長180㎝の巨漢で、熊のような風貌。

瞳に都立・中の原高校からの書類を見せて、嘘をついていたなと

激怒している。 瞳は張り倒されて雪の中に埋まる。

磨緒が瞳と一緒に父親に東京行きを許すように頼むが、

父親は磨緒も雪の地面に叩きつける。 磨緒は負けずに

父親に体当たりを繰り返し、三度目には父親も地面に倒れる。

その結果、磨緒は足のギブスは割れ、腕を痛め、瞳に再度

病院に連れてって貰う。

 

 数日後、磨緒の姉、麻美の大学が休みで、スキーを兼ねて

磨緒を迎えに来る。

 

 明日は東京に帰るという晩、伯父が瞳をペンションに呼ぶ。

伯父夫婦も麻美ねえも早めに自室に行き、二人だけにしてくれる。

瞳は何とか父の許しを貰い、東京の高校に顔を出して来たという。

 

 瞳は磨緒にお守りの文様に使われている「鳳凰」について

詳しく説明する。

 

 瞳は磨緒と麻美姉を車で駅に送る途中、昭人が働く結婚式場に

連れて行く。 そこのホールに置いてあるグランドピアノで

ショパン夜想曲 2番 変ホ長調を弾いて磨緒に聴かせる。

 

 東京には3月上旬、吉祥寺のアパートに引っ越す。

磨緒は補習があるので、麻美姉が先に行って手伝う。

磨緒は夕方着いて、瞳と1ヶ月ぶりに再会。

 

 小さな二つのお守りが結ぶ縁(えにし)の未来は

まだ分からない。

 

              

 

 

オクちゃんの読書日誌 第6回

「psi力あるもの 愛の行方」 

   「psi(プサイ)力=超常力」

https://www.novelabo.com/books/547/chapters

ノベラボ 104,091文字 2016-03-01

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 16年前、双子が生まれた。 

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 然し、を持つ双子は禁忌とされていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 私は高2女子、惣領未知(そうりょう みち)

冷たい感じを出すために眼鏡をかけている。

家族は父親と私だけ。 祖母は仏壇の中。

 

 学校までは桜並木を歩いて15分。

校門で体育の杉崎先生に迎えられる。

教室に入ると、隣のクラスの泉洸太(いずみ こうた)

私の席に座っている。彼は背が高くハンサム。

同級生の女子、黒谷慧(くろたに けい)には気に入らない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 祖母が生きている時に教えられた。

常に平常心を保て。

冷静でいなければ自らを苦しめることになる。

無闇にを使ってはいけない。

そのは人を幸せにすることもあるが

自分が傷つくことのほうが多い。

何を感じても、何が聞こえても、冷静に穏やかに。

怒りを相手に向けてはいけない。

人を妬み、恨んではいけない。

それが未知に課せられた約束。

 

 未知の右耳の後ろには小さな三日月の形をした痣がある。

祖母のわき腹にも同じ印があった。

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 それは、を持つ者の証拠。

 触れた人や物の念を読み取ることができる。

 感情をにして相手にぶつけることができる。

 相手からぶつけられた念には防御壁を張ることができる。

 

 惣領家は能力者の血筋を持つ人間が生まれる家系。

 隔世遺伝で、私、祖母、曾々祖父が能力者。

 

 このを持つ者だけが知ることができる。

ほかの普通の人間に気付かれてはいけない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 小学校に上がったばかりの頃、母が家を出て行った。

この時の悲しみと絶望感によって私のは開花した。

中2のとき祖母が他界し、父との二人暮らしになった。

 

 念を読み取るで、物に触れたり、人に触れると、

感情が脳になだれ込んできて苦痛を受ける。

祖母がをコントロールする術を教えてくれたので

未知は生きていられる。

 

 祖母によれば、ある者同士が想いを交わらせてはいけない。

つまり、愛し合ってはいけないとのこと。

もし、そうなれば、恐怖と破滅が待っているのだと。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 泉洸太の肩の後ろに三日月形の赤い痣があった。

彼に「好きだ」と告白され、未知の心臓があばれる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 父が再婚相手の神谷詩織と息子のを連れて来る。

誕生日は私は3月27日。陸は3月26日。

1日違いの姉と弟。

 陸は私の高校に転校。 同じクラスで、隣の席。

陸は顔立ちが綺麗で女子生徒たちの注目の的になる。

二人は昼食を図書室で一緒に食べる。

陸は母の詩織とは似ていない。 心を穏やかにしてくれる。

 

 未知は黒谷の左手首に三日月の痣を見付け、を持つのか疑う。

黒谷から激しい憎悪と邪気を感じ、気分が悪くなるが、陸が

介抱してくれると治る。

 

 泉が陸にヤキモチを焼き、度が過ぎたために、未知は

泉の頬を引っ張叩いてしまう。

 

 黒谷に屋上に呼び出される。 手首の痣はただの打撲痕と判るが。

黒谷の強烈な嫉妬心が未知の胸に衝撃を与え、未知は失神する。

陸が現れ、黒谷に激しく文句をぶつけ、未知を保健室に抱いて行く。

それ以来、人や物に触れると、人の念が入ってきて、未知は

体調を崩して行く。

 

 未知が気分が悪くて保健室に行くと、泉が傷の手当てに来ていた。

泉が未知に想いを訴え、未知は苦しむ。 そこへ陸が現れ、

泉を殴り倒し、未知を連れ出す。

 

 陸は未知に恋してると云い、未知も陸を愛するようになる。

 

 両親が新婚旅行を兼ねて、箱根に一泊旅行に出かける。

その留守中、未知と陸はベッドを共にする。

 

 陸は親たちが話しているのを聞いて、自分は実子ではなく、

捨て子で、施設で育ったことを知ったという。

 

 二人は繋がりを持ってから、身体に異変が起きる。 

未知が祖母の写真に助けてと訴えると、「私の元に来なさい」

という祖母の声が聞こえてくる。 

写真の裏に隠された祖母の着物の切れ端に触ると、祖母が現れ、

事情を説明する。

 

 を持つ双子は禁忌とされており、片方しか生かせない。

それを、祖母は母親の記憶を消し、家から出て行くように

仕向け、後から生まれた男の子は、殺すことが出来ず、

施設の門前に捨てたという。

 

 確かに、陸の耳の後ろには朱色の三日月の痣があった。

陸のは未知のより弱いが、癒しのを持っていた。

 

 祖母の指示は引き出しに隠してあった小刀で陸を刺し殺せと

いうことだった。然し、未知はそれに逆らい、陸に小刀を握らせ、

自分の身体を小刀の上にかぶせる。

 

 未知の記憶はみんなの頭から消え、この世に存在した証拠も

無かった。 

 

 然し、陸にだけは未知の記憶が残る。

 

 ある夏の夕方、陸は学校に行こうと桜並木を歩いていた。

弱っている仔猫を見つけ、抱いてやるが、癒しのは消えていた。

諦めて、歩き出すと、「助けてあげないの?」という未知の声。

 

 陸は未知に抱き付き、未知も陸を強く抱きしめると、

二人の姿は夕闇の中に消えていく。

 

                  

オクちゃんの読書日誌 第5回

「粉雪舞う季節に宿る初恋の想い」

             作: さかき原枝都は

2017-10-04 カクヨム 18,255文字

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882128158

 

 本作品は秋田県横手市の伝統行事「横手のかまくら」から生まれた。

 

  秋田県と云えば「小野小町」が有名。

 

  秋田の伝統行事で有名なのは東北三大祭りのひとつ「竿灯祭り」:

 

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  それと、国内三大花火大会のひとつ「大曲全国花火競技大会」: 

 

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 そして、ユニークな雪国のメルヘン「横手のかまくら」:

 

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 「かまくら」とは神の宿る雪室(ゆきむろ)のこと。

 横手市に450年続く小正月の伝統行事。

 毎年2月15~16日の夜行われる。

 横手市内に約100個作られる。

 

 中から地元の子供たちが外を通る人達に声を掛ける。

   「はいってたんせ(入って下さい)」

   「おがんでたんせ(拝んでください)」

 中に入って、水神様にお賽銭をあげて、幸運を祈ると、

子供達が甘酒(あまえこ)と餅、菓子をくれる。

 ここで、”話っこ”に花が咲き、恋が芽生えたお話。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

  「粉雪舞う季節に宿る初恋の想い」

 

 「かまくら」から放たれる淡いオレンジ色の光が、薄暗くなった

空と白い雪とのコントラストを一層幻想的に輝かさせる。

 

 僕、真壁友哉(まかべともや)は小学生のとき、父親の転勤で

東京から秋田県横手市に引っ越し、3年間ほど暮らした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 「かまくら」から同じクラスの女の子が、朱色の「どんぶく」

を着た姿で、僕の名を呼んだ。

 彼女の名は佐々木奈々枝(ささきななえ)

目鼻立ちの整った美人顔で、明るく、気さくな性格。

 「かまくら」の中は暖かった。 

水神様にお賽銭をあげ、両手を合わせる。

彼女が優しく微笑み、甘酒を振る舞ってくれた。

僕は胸がいっぱいになった。

 

 彼女は住まいが近く、仲良くしてくれた。

小学校卒業の直前、父の転勤で東京に戻った。

 

 中学に入った頃、彼女から手紙がきた。

アルトサックスを抱えた写真が同封されていた。

僕は書くことがなく、簡単な返事だけ書いた。

 

 高校1年のクリスマス近くに、街中のイルミネーションの

中に大きな二つのドーム型の雪の塊を見つけた。

僕には、すぐに、それが「かまくら」だと分かった。

彼女への想いがふくらみ、横手の「かまくら」を見に行きたくなった。

直ぐ、旅費のためにバイトを始めたが、2月の15~16日は

インフルエンザで高熱のため、秋田には行けなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 私は高校生になり、男の子から何度も誘いを受けたが、

その気になれず断り続けた。

毎年、「かまくら」の季節がくると、真壁友哉との思い出が甦る。

友達の朋美や昭から「待ち人は来ないのか」と冷やかされる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 僕は、結局、高校の3年間、横手の「かまくら」に行けなかった。

ある秋田のイベントのポスターに佐々木奈々枝の美しく成人した姿を

見つけた。

 高3の夏、彼女から手紙が来た。

携帯の番号と、そのあとに「友哉の声が聞きたい」とあった。

 僕はバイトして横手に行こうとしたこと、大学は国立の

秋田大学を受けると返事。

 彼女からは「待っている奈々枝のためにがんばれ」との返事。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 私は父親や朋美,昭に手伝って貰い、家の前に「かまくら」を

作り、中で友哉を待つ。

 足音が近付き「はいってたんせ おがんでたんせ」と声を掛ける。

 遂に、初恋の想いがかない、二人とも涙が止まらない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ラストシーンは二人が3才の娘、愛奈を連れて横手の「かまくら」を

訪れて終わる。

 

                 

 

オクちゃんの読書日誌 第4回

「君が歌を歌うとき」 

https://t.co/ittM306K8P 

Novel Days   58,670文字 2018/10/17

  

 僕は就職を機に通勤に便利な所に1LDKのマンションを借りた。

仕事から帰ると「日和(ひより)」がソファーに丸まっている。 

眼を開けて「ともちゃん、お腹空いた」という。

チャ-ハンを作って食べさせてあげる。

 

 「日和」が幼い時のような顔をすると、たまらなく可愛くて、

頭を撫でたい衝動に駆られるが、手を伸ばすことを躊躇う。

 

 日和と僕は家が近所で、年も近く、幼い時からのつきあい。

日和は明るかったが、ある時から変わった。

 

 日和は度々僕のマンションに来ている。

日和は細かいことは気にしない。まわりの事も気にしない。

何日も食事をしないこともある。

僕が大学を卒業して就職していることも気が付かない。

 

 日和は二つ年下で、僕と同じ大学に通っている。

勉強をしているようには見えないが、成績は良い。

 

 日和はよく男友達を変え、彼等の部屋に入り浸ることも

あるようだ。 実家のマンションには帰っていないようだ。

日和に訊くことはなく、すべて僕の想像だが。

 

 ピンク色のヒヨコが欲しいと言い出す。

そして、 日和は「彼の歌」を口ずさむ。

 

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 雨に降られてコンビニでビニール傘を買って帰り、

「そっけない」と云ったら、黄色のポスカで沢山の印と

三日月を描いてくれた。

 

 「お腹空いた」というので、卵サンドを作ってあげたら、

一切れ食べた。

 

 そのあと、「ねえ、ともちゃん・・・」と何かを言いかけ、

あとは、僕の眼をじっと見つめて、苦しそうな顔をしている。

でも、僕は「何?」と訊き返せない。

 

  日和が僕のマンションに帰ってこなくなった。

新しい男ができたのか、どこかの町の祭りにピンクのひよこを

探しにでも行っているのだろうか。

洗面台の歯ブラシが失くなっていた。

 

 紘(ひろ)がビールを持って訪ねてきた。

 

 桜の花びらが散る季節になった。

 

 紘に呼び出され、深夜のカフェに行った。

そこで、半年ぶりに日和を見かけ、喜んだのも束の間、

男が現れ、ガッカリ。

二人は珈琲をテイクアウトしただけで出て行った。

日和は僕に気付いた筈だが、僕たちの邪魔をしたくなかったのだ。

 

 夏のうだる日、日和が帰ってきた。 

彼女のTシャツを買いにジーンズショップへ連れて行く。

帰宅して、シャワーを浴びて、ビールを飲んでいた。 

日和が「ねえ、ともちゃん・・」と言いかけたが、

インターフォンが鳴ると、いつものように途中でやめる。

紘が訪ねて来た。 日和はビール片手に外出。 男二人に配慮してだ。

雨が降ってきて、ビニール傘を手に日和を探しに行くと酒屋に居た。

 

 日和は出たり、入ったり。

 

 夜、ビールを買いに酒屋へ向かう。

途中で日和を見かけるが、男が抱き付く。

日和も男の背中に手を廻し、撫でている。

 

 夢に日和が現れ、「”大好き”って言っちゃった」と云い、

そのあと、「彼の歌」を歌い出す。

 

   「何度見上げたら青い空は見えてくるのだろう。

    いくつの耳をつけたら、あつには人々の泣き声が

     聞こえるのだろう。

    何人死んだら気づくのだろう。

     数えきれない命が消えてしまっていることを。」

 

 ねえ、日和。 僕は、君が彼の歌を歌うわけを知っているよ。

 

 朝早く、日和が帰ってきて、起こされる。

 

 夏の一日、紘が日和を縁日に誘いに来た。

日和は釣った金魚の袋を手に下げ、ピンクのヒヨコを探す。

ヒヨコはサニーのためと云う。

 

  (昔の縁日で売られていたカラーのヒヨコたち)

 

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 日和が部屋から出なくなった。 大学が夏休だから。

紘が日和にいろいろなものを持ってくるが、日和は元気が無い。

日和が金魚を千葉君(サニー)のマンションへ届けに行く。

日和は千葉君に「ご免ね。ピンクのヒヨコじゃなくて」という。

サニーの彼が坊主頭で、日があたるとピンク色に見え、

笑った顔がヒヨコみたいにカワイイのだそうだ。

サニーと彼はゲイだが、彼はほかの男の所に行ってしまい、

いわゆる、心中をしてしまった。

 

 「彼の歌」の続き:

   「大切だから、だから伝えたの。

    なのに、私の言葉は銃になった。」

 

 日和は「大好き」と云った相手は

みんな死んでしまうと思っている。

 

 歌の続き:

    「ーーママ、私の銃を地面に置いて欲しいの。

      もうこれ以上、大切な人を失くしたくないの。

      あの、長くて黒い雲が落ちてくるよ。

      天国の扉を叩いているような気持になるのーー」

 

 日和が「ともちゃん、サニーが少し元気が出てきたの」

と云って微笑み、僕は日和の笑顔をみて安心する。

 

 日和は僕が入社して1ヶ月の頃、「ともちゃん、

肩の力を抜いて」と云った。 

それで、真面目でも肩の力を抜くことを覚えた。

 

  紘とランチに行き、日和のことがずっと好きだったと告白する。

紘はそんなことは最初から気付いていたという。

だから、お互いライバルとして堂々と戦おうという。

 

 その日の帰り、紘は僕のマンションに来た。勿論、日和に会うため。

日和は紘をおだててキッチンでパスタを作らせ、その間僕と

リビングで飲み物を飲む。

 

 紘が帰った後、日和が「ともちゃん。私、ともちゃんのこと・・・」と

言いかけたところへ、紘がスマホを忘れたと云って戻ってきた。

紘が去った後、日和にさっきの続きを聞きかけるが怖くなってやめる。

 

 TVで悲しいニュースが流れるたびに、日和は暗い顔になって

「彼の歌」を口ずさむ。

 

 僕はインフルエンザにかかり高熱で病院に運ばれた。

日和は見舞いに来てくれ、退院のときも迎えに来てくれた。

 

 日和が母親がいなくなったマンションを引き払うという。

日和は「もう・・・、色んなこと。やめようと思って・・・」

「きっと。それが一番良いはずだから・・・」という。

僕は日和は千葉君のマンションか僕のマンションに引っ越す

のだと思っていた。

 

 翌日、日和は帰ってこなかった。

僕はマンションの整理に行ったのだと思っていた。

一週間過ぎても日和が戻ってこなかった。

ビールや酎ハイの補充のため酒屋に向かうと千葉君に会った。

千葉君から日和が手首を切って病院に入院中と聞かされ、

病院に駆けつける。 

千葉君によると、日和は「大切な人を失うくらいなら、

生きていたくない」と云っていたという。

 

 僕は日和に「大丈夫」だから「大好き」と云うと、

日和も「大好き」と云う。

 

 紘にホッペを思い切り殴られる。 僕が悪いというのだ。

 

 「大好き」と云っても僕が消えないので、日和が笑顔で

「ともちゃん、大好き」と云えるようになった。

 

 「彼の歌」はいらなくなった。

 

               

     

オクちゃんの読書日誌 第3回

「君と、あなたと出会えたのは、

あの夜空に輝く花火があったから」

               作:さかき原枝都は

 

 本作は2017年9月から「小説家になろう」と「カクヨム」に

連載された165,527文字の長編恋愛小説。

 

 本作品では2011年3月11日(金)の「東北大震災」と毎年8月の

第4土曜日に行われる秋田県大仙市大曲の「全国花火競技大会」が

重要な事件として再三触れられる。

 

 「東北大震災」は説明の必要は無いが、大曲花火大会は知らない人も

いるだろうから、宣伝を兼ねて、特徴を記しておく。

 

 まず、全国三大花火大会というのは :

                       観客数

    秋田県大仙市 1万8千発 1夜のみ 約80万人

    茨城県土浦市 2万発   1夜のみ  80万人

    新潟県長岡市 2万発   2夜   100万人

 

 大会優勝者に内閣総理大臣賞が与えられるのは、当大会と土浦大会のみ。

 昼花火が行われるのは全国でも当大会のみ。 

 

 

                                蒔野巳美(まきのともみ) 

 

 私、蒔野巳美は6年前、2012年の夏、秋田県大仙市大曲の

全国花火競技大会」で夜空に輝く大輪の花火を見た。

 

 この日は私にとって特別な日。

この日があったから、私は一歩前に踏み出すことが出来た。

 

 私は高校2年の春、宮城県で「東日本大震災」に遭い、

母親と大事な人を失い、秋田県大仙市の親戚に引き取られた。

 

 叔父・叔母に花火見物に誘われたが、そんな気になれず、

町の中を彷徨い、川の土手に辿り着く。 

 

 そこに居た若い男性に声を掛けられて隣に座る。

彼は泣きじゃくる私の手を、やさしく握り、暖かみが

伝わってくる。

 

 雪が積もる冬になり、私のPTSDの症状はどうしようもない程

重くなり、大学病院の精神科に入院する。

 

 そこで、花火の時手を握ってくれた人、精神科の助手で医師、

杉村将哉(すぎむらまさや)と再会する。

 

           杉村将哉(すぎむらまさや)

 

 僕には高2からつきあい始めた辻岡歩実香(つじおかふみか)

がいた。 彼女は僕が大学5年のとき、秋田に移った。

彼女は東京で看護師をするつもりだったが、両親が秋田に引っ越し、

父親が脳梗塞で死亡、母親が一人残されたので、母親と一緒に暮らす

ことにする。

 

 東京と秋田の間で辛い遠恋が始まった。

 

 僕と歩実香のなれそめ。 

僕は大学の医学部を受験するので、バスケ部を2年でやめた。 

1年先輩でバスケ部のマネージャーだった歩実香から

ラブレターを貰ったが、僕は返事を出さなかった。

彼女がバスケのキャプテンと付き合っていたのを知っていたから。

然し、当のキャプテンから歩実香は僕が1年の時から僕を想って

いたから別れたとのだと教えられる。

 

             蒔野朋美

 

 PTSDで気を失い入院した私が気がついたとき、私の手は

杉村先生の手に握られていた。 その暖かさで花火の時の

記憶が戻る。

 

 私は東京の中学を卒業して、高校に入学した1年後、

両親が離婚、宮城の海岸の町の高校に転校した。

父が謝罪の手紙と現金3万円を送ってきた。 

その金の使い道に困り、東京の石神井の父に会いに行った。 

然し、新しい家族と幸せそうな父を見て、会わずに帰ってきた。

 

 唯一の親友は冨塚和美(とみずかかずみ)。 和美も母子家庭。

 

 酒屋の息子の大島和也(おおしまかずや)は同級生だが

人見知りで、学校も良く休むし、人付き合いも悪い。 

自転車で配達途中、巳美が防波堤にいるところによく

姿を見せた。 和也は巳美が自殺するのではないかと

心配だったという。 そして、二人はキスする仲になった。

 

 巳美は和也と和美が手をつないで歩いているところを見つけ、

二人の仲を疑い、絶交を宣言。 ところが、それは、和也が

巳美の誕生日(9月1日)プレゼントを選ぶのを和美に

手伝って貰ったことが判る。

 

 和美は和也との仲を巳美に説明する。 二人は小学からずっと

一緒だった。 中学の時、和美の両親が離婚し、和美が学校で

イジメにあった。 和也は全校生徒・教師の前でイジメを

やめるようにと訴えた。 それで二人の仲は急接近した。

そして和美は妊娠・中絶。 和也は他校に転校させられる。

 

 和美は巳美の家に泊まり、和美は巳美にキスする。

 

 三人で夏祭りに行き、花火を見て、屋台に寄る。

和也が巳美にくれた誕生日プレゼントは花火と同じ、

赤、青、緑、金色、4色のサファイアを散りばめたペンダント。

 

 蒔野巳美は未成年の18才。 3月には退院するが、親戚は

引き取りを拒否する。 

 

 将哉は上司の準教授から巳美を亡き辻岡歩実香の母親に預ける

ことを勧められる。

 

 蒔野巳美は辻岡歩実香にそっくりだった。

 

          辻岡歩実香

 

 杉村将哉は歩実香が風邪をこじらせ入院したとき、卒業式を

欠席して病院へ行き、歩実香に「好きだ」と告白。

 

 歩実香が東京の将哉に8月の第4土曜日の大曲の花火を

見に来ないかと誘う。

 

 将哉は秋田空港に飛び、歩実香が車で出迎える。

花火会場に車で行き、歩実香の同僚の奥村秋穂(おくむらあきほ)

家の庭に駐車させてもらう。 花火会場は混雑しており、歩き回って

奥村家の近くの土手から花火を見た。

 

             蒔野巳美

 

 将哉は巳美に、彼女を預けようと考えている、

亡き辻岡歩実香の母親の説明をする。 

 

 他方、歩実香の母親に巳美の説明をする。 

母親は既に准教授から話を聞いていた。 

彼女は将哉に、病院へ行って、巳美を離れた所から見た上で

決めると答える。 

 

            辻岡歩実香

 

 花火を見た翌日、歩実香は新幹線で東京にもどる将哉を見送る。

 

 冬が過ぎ、将哉は医師国家試験に合格。 研修医として病院勤務を

始め、次の夏の花火は見に行く余裕は無い。

 

 歩実香の母親が子宮筋腫で入院したが、歩実香は将哉には

要らぬ気を使わせまいとして知らせない。 

 

             蒔野巳美

 

 夢の中で「巳美」「巳美」と呼ばれるが、誰の声か判らない。

病室を出て、歩きながら夢を見ていて気を失う。 

そこを歩実香の母親が見掛けて助ける。

 

 巳美のPTSDの症状が重くなり、自殺願望を抱いて海に向かい、

失神する。

 

            辻岡歩実香

 

 男の子が信号を無視して、歩実香の車と接触する。

 

 歩実香は将哉との辛い遠恋に疲れ、神経を患い、

心療内科医師、真壁信二(まかべしんじ)の治療を受ける

 

 真壁医師との食事のあと、将哉にプレゼントするコートを買う。

帰宅途中、車に連れ込まれ暴行される。 

 

            杉村将哉 

 

 外科の研修の指導医は女医の笹山医師。 

笹山医師は歩実香が東京の病院にいたときのことを知っていた。

将哉は歩実香に伝えるが、二人の間のやり取りは更に減る。

 

 田島尚(たじまなお) 12才 サッカー少年が練習中に倒れ、

搬送されて来る。 左心室の心筋不全、特発性拡張型心筋症で

心臓移植しか助かる方法は無い。

入院2年後失命、将哉は無力感を味わう。

 

 雨の中、海岸に向かった巳美を防波堤で見つける。 

巳美は将哉の腕の中で意識を失った。

 

             蒔野巳美

 

 和也と和美と3人で行った夏祭りのあと、巳美は和也と結ばれた。

 

 翌年、2011年3月11日、「東日本大震災」の日。

津波が襲って来て、和也が「巳美は生きろ」と云って波間に消える。

母の遺体も見つかる。

 

 意識が戻った時、歩実香の母親が看病してくれていた。

 

 将哉もいた。 

 

 歩実香の母は巳美の引き取りを一旦断ったが、それは

将哉に対するこだわりからだった。 然し、歩実香にそっくりの

巳美を見てから、巳美を世話したくなった。

 

 巳美と将哉は日の光が射しかける暖かい梯子を登り始める。

 

            辻村歩実香

 

 真壁医師から告白される。 

 

 歩実香は職場に復帰する。

 

 歩実香は東京の将哉にコートを届け、自分の心を確かめようとする。

 

             杉村将哉

 

 笹山医師の厳しい指導が続く。

「医者である前に一人の人間であれ」という言葉は

今後の人生の苦しみを乗り越えさせてくれそう。

 

            辻村歩実香

 

 予告なしに将哉を前の職場であった病院に訪ねる。

笹山医師が歩実香を見かけ、将哉を早退させる。

歩実香はプレゼントのコートを将哉に渡す。

暴漢に汚されたコートは店が好意で新品と取り換えてくれていた。

二人は馴染みの店でオムレツを食べ、将哉が通っていた塾を

見に行く。

歩実香は将哉への気持を確認し、真壁医師への気持は消える。

 

            杉村将哉

 

 歩実香の態度に違和感を覚えるが、歩実香は何も話してくれない。

歩実香は東京に一泊もせずに秋田新幹線で秋田に帰っていく。

 

            辻村歩実香 

 

 結局、将哉には何も言わず、用意した手紙も渡さなかった。

 

 真壁医師から婚約指輪を渡されそうになるが、歩実香はきっぱり

断る。

 

 歩実香は横断歩道を渡る少女を助けようとして、車にはねられ、

命を落とす。

 

              杉村将哉

 

 秋田の歩実香の同僚奥村秋穂から歩実香の死を伝える電話を受ける。

笹山医師から、羽田から飛行機で行けと云われる。

 

 母親から歩実香の手紙を受け取る。

 

 真壁医師から歩実香に断わられた指輪を受け取るよう頼まれる。

 

 研修は、外科から内科、精神科へと進む。

 

 将哉は毎月歩実香の命日に日帰りで墓参をする。

 

 2011年3月11日(金)「東北大震災」が起きる。

笹山医師と二人だけで宮城へ派遣医師として赴く。

 

 笹山医師は北部医科大学の高度救命センターへ移る。

 

 将哉は笹山医師から外科には向いていないと云われる。

笹山医師の彼は外科医師だったが、屋上から飛び降り自殺した。

 

 将哉は秋田の大学の精神科を志願し、研修医として受け入れられる。

 

 大曲の花火の夜、巳美と出会う。

 

             蒔野巳美

 

 2週間ごとに通院、将哉と会う。

 

 5月の連休を過ぎ、将哉が同行して、宮城の海の防波堤へ行く。

巳美は宮城の海に自分の弱い心を捨てたかった。

将哉に「好き」と告白する。 医者になると海に誓う。

 

 巳美は高卒認定試験を受け、大学の医学部への入学を果たす。

 

 養子縁組で辻岡巳美となる。

 

 冨塚和美は生きていて、看護師になっていた。

 

 将哉はアメリカに3年間の研修に行く。

 

 巳美は歩実香が貰うはずだった指輪を左の薬指にはめ、

指輪に絡んだ人達の想いを感じる。

 

 秋田県大仙市大曲の「全国花火競技大会」がきた。

巳美が見る場所は特別な場所。 

私と私の大切な人との秘密の場所。

 

 花火が打ち上る。 近づく足音。

「その席、まだ空いているかな?」

 

 左手の薬指の指輪を右手の薬指に移し、新しい指輪を

左手の薬指にはめてくれる。

 

「結婚しよう」。

 

君と、あなたと出会えたのは、あの夜空に輝く花火があったから。

 

               

 

原作は下記URLでご覧ください:

https://ncode.syosetu.com/n0181eg

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884049110