オクちゃんの読書日誌 第11回

「哀しみのエヴァンス

  ~いつかアンダーカレントを~

               作: 柊

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https://novel.daysneo.com/works/7d58d92100ebf60d098fa7533329d740.html

NOVEL DAYS  98,642文字

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ビル・エヴァンス

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アンダーカレント

  オクちゃんの適当な冒頭解説 

 タイトルの中の「エヴァンス」とはジャズピアニストの「ビル・エヴァンス

「アンダーカレント」はアルバムの中の1枚、「アンダーカレント」のこと。

ビル・エヴァンスジム・ホールの歴史的な競演のCD.

直訳すれば「水面下とか海面下にあって、見えない水流

ジャケットでは水面下に漂う女性の姿で水流の存在を表現しているようだ。

 

   「哀しみのエヴァンス

      ~いつかアンダーカレントを~」

 

 主人公は澤木涼音(さわきすずね)という少女。

 

 物心ついた時から、自宅に立派なグランドピアノがあった。

両親はプロのミュージシャンで、コンサートなどに出演のため、

度々家を留守にし、近くの地下でジャズ・バーを経営する叔父さんが

彼女の面倒をみてくれていた。

 

 両親は彼女をプロのクラシック・ピアニストに育てようと

厳しく育てた。 お蔭で、コンクールには片っ端から優勝し、

メディアから天才少女として祭り上げられていた。

 

 本人の意思とは関係なく、ピアノが最優先で、学業は二の次、

スポーツや遊びとは無縁の生活だった。

 

 あるとき、町で幸福そうな親子の姿を見ているうちに、

クラシック・ピアノを弾く気力が無くなってしまった。

 

 両親も諦め、叔父さんの世話で普通のオフィスに勤める。

帰りに叔父さんのジャズバーに寄って、年下のバーテン、俊ちゃんが

出してくれる氷を浮かべた褐色のドリンクと手作りの料理が楽しみ。

 

 かつて、ジャズ・ギターを弾く彼と一緒に演奏したあと、

彼と並んで座って飲んだカウンターの席が彼女の指定席で、

常連さんはそこには近寄らない。

 

 或る晩、その席に涼音とおない年くらいだから、25~6才の

男の客が座っていた。 俊ちゃんによれば、最近よく来る客という。

 

 ある時、会社で同僚と諍いがあり、上司から叱られる。

叔父さんのバーに顔を出すと、その客がうるさく声を掛けて来る。

嫌になって店を飛び出すと、追いかけて来て腕を掴まれる。

彼の名前は成瀬と言い、その後も涼音に付きまとう。

 

 叔父の店がパーティーを引き受けたが、俊ちゃんが発熱で、

涼音が代わりに食材の買い出しに出かける。

そこで、年上の女性にからまれる。 彼女はかつて叔父のバーで

涼音にジャズを教えてくれた世界的なジャズ・ギタリスト

川端征爾の事務所の人間かマネージャーだったらしい。 

彼女は彼と涼音が路上でバイクに突っ込まれ、彼が身を挺して

涼音を守り、彼の方は怪我をして引退に追い込まれたことを

怨んでいた。

 

 涼音は彼女に「いっそ、私を殺して」と叫びながら、拳を地面に

叩きつける。 そこへ成瀬が飛んできて、涼音を助け出す。

 

 成瀬が自分の車の中で、涼音の傷ついた手を手当てし、買い物を

バーまで運び、涼音を家まで送る。 

 涼音が包丁で指を切り落とそうとするが、成瀬が止めて、

刃物を全部片づける。成瀬は心配だからと言って、涼音の手を

握って一緒に寝る。

 

 成瀬が「夢の国」のような遊園地に連れて行ってくれる。

乗り物、食べ物、お土産と成瀬が気遣い、涼音は元気になる。

叔父のバーに寄り、ピアノに向かうが、手が震えて弾けない。

 

 成瀬は、今度は、涼音をあるライブに連れて行く。

そこで、かつて、クラシックの仲間だった蓮美を発見する。

彼女もクラシックを諦めて、ジャズに転向、キーボードを担当していた。

 

 成瀬が涼音を自分の出身小学校に連れて行く。

講堂のピアノで涼音は「猫ふんじゃった」を弾き、ピアノを弾ける

ようになったと思える。

 

 成瀬を叔父のバーに連れて行き、ビルエヴァンスWaltz for Debby

弾く。

 

 ある時、バーの入口に、以前絡んできた征爾の関係者と思われる

女性が涼音を待ち伏せしていた。 征爾のその後を聞くと、前に

会った路上の近くに居るという。

 

 成瀬が征爾のギター教室のことを調べて来る。

二人で探しに行って見つける。 

涼音を怨んでいた女性は征爾のマネージャーだった。

 

 征爾は涼音に「ご免」と詫びる。 征爾も表舞台で演奏するのが

嫌になり、涼音にジャズを教えたのも「逃げ」だったという。

バイクが飛んで来た時は、事故に巻き込まれたら、怪我で引退出来ると、

自分から身を投げ出したのだという。 だから、バイクが良く見えて、

大怪我をしないようにしたので、怪我は大したことは無かった。

又も、涼音に心配かけて済まなかったと詫びる。

涼音は裏切られたような気がする。

 

 全てが明るみに出たら、涼音は気が軽くなり、叔父のバーに行って、

ジャズを弾きたいと成瀬に言う。 観客は叔父と俊ちゃんと成瀬だけ

だが、涼音には三人の拍手が演奏会場の大観衆の拍手より大きく轟いて

聞こえた。

 

 涼音はいつかビルエヴァンス「アンダーカレント」を弾けるかも

しれない、いや、絶対弾いてやると思った。

 

                         終わり